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大切な女(ひと) [くろのだ]

ルー・マルレの練習を終えて帰り際に携帯電話を

チェックをいれると意外な人からメッセージが入っていた。


『クロキン、私、真澄だけど・・・』


僕はとても信じられなかった。

奥山君からの突然の電話でなく内容に・・・。



『のだめと千秋様、どうやら別れたらしいの』


どうして・・・・・!?

にわかに信じられなかった。




だが千秋くんに聞いてみるとそれが真実であると

知ったのはその夜だった。

「うまくいってたんじゃないの?」

『いってたよ。少なくとも俺はそう思ってた』

「じゃあ、どうして・・・?」

煮え切らない千秋くんの態度に僕はムッとした。

『黒木くん、俺が振られたんだ。あいつが、のだめがもう終わりに

しようって言ったんだ』

「だからってそんなにあっさり承諾する事ないじゃないか!」

『のだめはああ見えてもきかん気な所があるから

俺は了解したんだ』

「君たちの過ごしてきた時間は一体何だったんだ?」

『とにかく俺達はもう無関係だから・・・』

そう言うと一方的に千秋くんは電話を切った。

僕はしばらくプープープーと言う音を聞きながら呆然と立ち尽くしていた。













僕は信じられずに急遽帰国した。

電話じゃなく直に恵ちゃんから事情を聞きたかったから。




半日がかりで恵ちゃんの実家に辿り着いた。


玄関の引き戸を何度か叩く。

恵ちゃんのおばあちゃんらしい人が出てきた。


「突然で失礼します。僕は黒木泰則と言います。桃が丘音大時代の友人です」

「恵の祖母ですたい。大学のお友達ね。わざわざありがとね」

「いえ。それで恵ちゃんは?」

「恵ばこの先の土手に散歩に行くゆうてましたけど」

土手の方を指差しながら教えてくれた。

「ありがとうございます」

頭を下げて歩き出そうとすると

「あの・・・」

なにか言いたげにおばあさんは口を開いた。

僕が振り返るとそれっきり何も言わずに頭を下げた。



しばらく歩くと土手には汚れる事も気にする様子も無く草っ原に座ってる恵ちゃんを

見つけた。

「恵ちゃん・・・」

「黒木・・・くん・・・・?」

突然僕が現れて恵ちゃんは立ち上がった。



しばらく重い沈黙が続いた。




傷心の恵ちゃんの横に立つ僕。

「大丈夫・・・?」

そんな言葉しか見つからない。



「糸がプッと切れたそんな感じデス・・・」

搾り出すように言った。


僕は何も言わずに少し細くなった体を両手で包んだ。

てっきり拒まれると思っていたのに

恵ちゃんは両手をだらんと下に下げたまま何の反応も示さない。


どれだけ深く傷ついたかわかる。

こんなにも傷つけた千秋くんが憎いと思った。


「のだめは・・・・、のだめなりに・・・・・

頑張ったんデス・・・・。でも、だけど・・・」


「もういい!もういいんだよ」

僕は壊してしまうかもしれないほど強い力で恵ちゃんを抱き締めた。


「でも・・・ダメだったん・・・デス・・・」

静かに流れる涙がせつなくて

どうすればいいかわからない僕はただ抱き締める事しかできなかった。


「黒木くんだってのだめがらピアノを取ったら何も残らないって

思ってるんでしょう!?」

「そんな事思ってないよ」


「嘘!のだめはピアノしかないんデス!!」

きつく目を閉じて叫んだ。


「どうしてそんな風に言うの?」

自分を卑下する彼女の言葉があまりに哀しくて

少し怒ったように言う。

「だって今までだってそうじゃなかったデスか」



「僕はそうは思わないよ・・・。僕は例え恵ちゃんがピアノを

弾かなくても好きだから・・・・」

こんなにも弱々しい恵ちゃんに言うべき言葉じゃないかもしれないけど

ずっと抑えていた淡い想いを伝えたかった。


恵ちゃんは一瞬大きく目を見開いた。

信じられないという表情。


「気づかなかった?初めて会った瞬間に僕は恋に堕ちた。

でも言わない方が良いと思ってずっと胸に閉まっていたんだ」


「・・・・・・嘘・・・」


「本当だよ」


恵ちゃんは困ったように下を向いた。


困らせるつもりなんて無かったけど言わずにはいられなかった。

口にしてしまった君への想い。

後悔はしていない。



「君は僕の大切な女(ひと)だから」


抱き締めた手に添うように重ねてくれた恵ちゃんの手が

ほんの少し僕を受け入れてくれたようで嬉しかった。



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